『マスエフェクト三部作 Legendary Edition』をクリアしました。
作り込まれた世界設定、広い銀河で共存する多様な種族とその歴史・勢力図、真実味のある機械技術、今まで経験したことのない、驚くような冒険に、終始ワクワクさせられるゲームでした。
あんなに奇怪で恐ろしい見た目のエイリアンたちがこんなに愛おしい存在になるなんて思いもしなかった…。
Mass Effect1とMass Effect2は、「早く続きを見たい!」「もっとこの世界のことを知りたい!」「もっと仲間と冒険したい!」という気持ちでどんどん進め、夢中になってプレイしてましたが、
完結編となるMass Effect3では、「ああー終わってしまう…」「みんなとお別れしたくない…」という気持ちでいっぱいになり、終始複雑な気持ちでエンディングを迎え、
そしてあの賛否両論のなんともいえないエンディングを見た後は数日のあいだ悶々とし、碌に眠れず食事も喉を通らず…笑
たかがゲーム。されども、完全に魂を奪われました。
あのエンディングについて、ずーっと悶々と考えていて、「あーこれは文章として吐き出す必要があるなー」と思ったのでここで記しておきます。
注)完全にネタバレしてますので未プレイの人は読まない方が良いです。
目次
エンディングの分岐をおさらい
まず、どんな分岐があるのかのおさらいです。
名声値と戦闘資産をどれだけ貯めたかによって変わりますが、最大で選択肢は4つ。
ざっくり言うと
- リーパーを破壊する(通称:赤ルート)
- リーパーを制御する(通称:青ルート)
- 有機生命体と機械生命体が融合・共存する(通称:緑ルート)
- 上記3つを全て拒否する
赤ルート
- リーパーを含む全ての機械生命体を破壊する。
- EDIやゲスも破壊される。
- マスリレイも大きな損傷を受ける(でも修復可能っぽい)。
- シェパードも、Mass Effect2で死体から蘇らされた時に体に機械を埋め込まれたりしているので、一部は機械である。よってシェパードも死亡する(※例外あり、後述)。
青ルート
- リーパーをシェパードが自由に操れるようになる
- シェパードは肉体を失い、思念や記憶だけの、カタチをもたない存在となる
シェパードが神様みたいな存在になって、みんなが平和に生きられるように見守ります、みたいな感じの結末だと思われます。
緑ルート
- 現存する全ての有機生命体のDNAを書き換え、有機生命体と機械が融合した存在になる。
- 現存するリーパーや、その他の機械生命体は、進化した有機生命体に対して理解を示し、手助けしてくれる存在となる
- 実現のためにはシェパードの生命エネルギーが必要となるので、シェパードは死亡する。
全部拒否ルート
- どの選択肢も選ばない。
- クルーシブルは発動せず、リーパーが勝利。
- ほとんどの生命体は刈り取られ、新たなリーパー製造のためのエサとなる
- 選ばれた数種族のみが生存させられる。
つまるところ、5万年ごとにリーパーが行ってきた「サイクル」が繰り返されることとなる。
制作陣はなぜそんなにシェパードを死なせたいのか
一応、戦闘資産をしっかり貯めて、名声値もマックスにして、適切な会話の選択肢を選んでいると、赤ルートだけ「シェパード生きてる?」と思われるエンディングを見ることができるんですよね。
でも、当然そんなことは事前に知らされません。
「どれ選んでもシェパードは死にますよ」っていうもんだから、悲しくなって自暴自棄になり、私は一度「全部拒否ルート」を選んでしまいましたよ。死ぬほど後悔したけども。
あと、不可解な点もいくつか。
「体の一部が機械だから死ぬよ」っていうのは、どこまでが機械だとだめなのか、そもそもシェパードはどの程度まで機械化されているのか、なんかその辺よくわからんなーと思うんですよ。
Mass Effect2の冒頭で、シェパードの体を蘇生させるための医療処置をしている映像があって、心臓になんか金属を埋め込んでたから、それが機能しなくなるとかそういう感じなのかな。
でもカタリストもAIなので、機械生命体を滅ぼされたくなくて(赤ルートを選ばせたくなくて)嘘をついている可能性はある。
なんにしても、3部作のゲームで、ずっと同じ主人公でプレイしてきて思い入れも愛着もめちゃくちゃあるのに、「最後は主人公が死んで終わりです」なんて、悲しすぎるのよ…。
単発の作品ならわかるよ?ファイナルファンタジーとか、「主人公犠牲エンド」はちょいちょいあったけど、どうにか受け入れられた。でも3部作の最後でそれをやられたら、もう立ち直れないのよ…。
マスエフェクトの2大テーマ
マスエフェクトには、2つの大きなテーマがあると思うんですよね。
- 「有機生命体 vs 機械生命体」
- 「異なる種族同士の協調と争い」
カタリスト&リーパーによる「サイクル」
有機生命体は、よりよい未来のために必ず機械生命体(AI)を作り出そうとします。しかし機械生命体は、その技術が発展することでいつか必ず有機生命体を超越する存在となり、最終的には有機生命体を滅ぼしてしまう。
有機生命体と機械生命体の間には必ず紛争・混沌が引き起こされてしまう。
人工知能であるカタリストは、それを解決する方法としてリーパーを生み出します。
5万年ごとに現れて、有機無機に関わらずほとんどの生命を滅ぼし、限られた数種族だけを残す。それ以外の種はすべて殺し(収穫)、新たなリーパーのDNAの中に組み込む(種の保存)。
それがいわゆる「サイクル」というやつです。
なぜそれがベストな策だと思ったのか理解に苦しむけど、そういうことらしい。
機械生命体がいなくても、紛争ってあるよね?
そもそも、カタリストが解決しようとしている「問題」自体がおかしいと私は思うんですよ。
機械生命体が有機生命体に牙をむくっていうのは、ゲスとクォリアンの関係を見ればわかるけど、それ以前に、有機生命体同士でめちゃくちゃ戦争してるじゃんって話なんですよ。
- プロセアンはかつて、アサリやトゥーリアンなどを「下等種族」と呼び、隷属させ、支配して巨大な帝国を築きました。
- かつてサラリアンの開発した「ジェノファージ」によって、クローガンの種の存続は「管理される」ことになりました。
強い種族が弱い種族を支配して脅かすのは、なにも「機械 vs 有機生命体」の枠にとらわれた話じゃないんですよね。
複数の種族が同時に存在すれば、紛争や混沌は生まれてしまう。
ただし逆に言えば、種族同士で協力関係を結びながら共存することも、有機・無機に関係なく可能だってことです。
EDIとジョーカーの関係や、ゲスとクォリアンの和解ルートがその良い例です。
赤エンドと緑エンドの違い
上記を踏まえて、エンディングについていろいろ考えたわけですが、
ひとまず青ルートに関しては、「シェパードを神様みたいな存在にする」ことで「すべて納得!」という気持ちにはなれなかったので、私の中では選択肢に入ってません。
「全部拒否」ルートも、クルーシブル建設やリーパーとの戦いのためにこれまで犠牲にしてきた人たちのことを考えると、選ぶことはできない。
個人的に、赤ルートと緑ルートのどちらがいいのかでひたすら悶々と悩んでいました。
のちに、どんな歴史として語られるのか?
赤と緑の違いは、「マスエフェクトの2つのテーマのうち、どちらがより深く歴史に刻まれるか」にあると思っています。
2つのエンディングが、その後どういった歴史として語られるのかを想像するとわかりやすいです。
緑エンド
かつてリーパーという強大な敵が、全ての生命を滅ぼそうとした。
そこで、多くの種族が団結し、可能な限りの全戦力を集めてリーパーに立ち向かった。
そして、あらゆる種族の技術力、知識を結集させて「クルーシブル」という装置を作った。
クルーシブルの発動によって、全ての生命体がとつぜん驚異的な進化を遂げた。それによって、有機生命体と機械生命体が融合し、平和的に共存できる世界が作られた。
こうやって比較してみると、緑エンドがやたら突飛で意味わからんって印象を受ける気がします。赤は「実際に起きた歴史」って感じがするのに対して、緑は神話っぽく後世に伝えられそう。
シェパードならどうするのか
赤ルートしかありえない
何度もエンディングを見返したけど、個人的には赤エンドが一番しっくりきます。
多くの種族がシェパードの呼びかけに応じ、力を合わせて戦ったのは「リーパーを倒すため」だし、クルーシブルを建設したのも「リーパーを倒すための最終兵器」だと思ったからでした。
リーパーを倒して、このクソみたいな「サイクル」を止める。
目的はシンプルです。
カタリストによる「緑ルートの提示」は、一見すると「機械と有機生命体の平和的な和解」に見えて、理想に見えますが…
「サイクル」というクソみたいな施作を続けてきたカタリストが提示する和解案なんて、聞き入れる必要が果たしてあるのだろうか?
言い方を変えれば、カタリストはリーパーの親玉であり、「諸悪の根源」と言ってもいい存在。
大切な仲間を殺し、罪のない多くの人々を虐殺したリーパーがあんなに憎かったのに、最後の最後でモヤッとした気持ちになるのは、自分達の敵だと思っていた存在が、急に味方ヅラをするからなんですよね。
残虐非道な「サイクル」を繰り返してきた存在なのに、無垢な子供の姿で現れることで、「悪者ではない」という印象を嫌でも受けてしまう。
印象操作ですわ。だから、カタリストの提示する案が「良い案」に思えてしまうわけです。
緑ルートを選びたい気持ちもある
とはいえ、「緑ルートでも良いのかもしれない」という気持ちも勿論あります。
その決定打になるのは、「EDIやリージョンに対してどれだけ愛着を持てたか」によるんじゃないでしょうか。
EDIが生き残って、機械と有機生命体の新たな平和的世界が始まることは、EDIへの愛着が強い人にとっては理想的なエンディングだと言えます。
緑エンドを見てしまうと、赤エンドでEDIを犠牲にするのはとても辛い選択になります。
EDIに「生きる」という感覚を芽生えさせ、「個」としてのリージョンを仲間として認め、自分のクローンの命すら助けようとしたパラゴンシェパードなら、緑エンドを選択してもおかしくありません。
でも、私はどうしてもこう思ってしまう。
カタリストの提示する方法で本当に正しいのか、信用できるんか?
リーパーを倒すために血反吐を吐きながらようやく辿り着いた先で、最後の最後に味方ヅラした親玉から予想もしていなかった選択肢を提示されて、カタリストの言われるがままにおいしい解決策に飛びついて、命を捧げる。
そんな選択を軽率にしてしまっていいのだろうか?
というかそもそも、シェパードはあの説明だけで緑ルートの結末がどうなるのか予想できたのだろうか?
「機械と人間の融合」だなんて、考え方によっては「みーんなハスクみたいな感じになっちゃうのかなー」とかそういう懸念が浮かび上がってきそうなものなのでは?
よくわかんないままで、「よくわかんないけど美味しい選択」に飛びつくのは、なんだか現実的じゃないような気がします。
カタリストは信用できないから自由意志を取り戻そう
いまの生命たちには、自分達で考え、相談し、選択する自由がありません。カタリスト・リーパーによって、命を握られているからです。
今にも命が刈り取られようとしている状況で緑ルートを選んだとしても、それはカタリストの提示する運命の中からやむを得ず選ぶ未来に過ぎない。そんな選択を誰が望んでいるだろうか?
そもそもの話、カタリストという人工知能を作ったのはリヴァイアサンなわけなんですが、リヴァイアサンって、自分達以外の種族を隷属化させて銀河を支配していたヤバいやつらなんですよね。基本的に他種族のことは見下しているやつらなんです。
カタリストを作って問題解決をさせようとしたのも、「このままだといろんな種族が絶滅して、俺らへの貢物が減っちゃうから」とかそんな理由があったみたいなことをリヴァイアサンが語ってるシーンがあったような。
個人的な印象ですが、機械生命体も有機生命体と同じで、育った(?)環境によって性格が変わると思うんです。
ノルマンディーで育ったEDIは、ジョーク好きで仲間想いのAIになったし、
クォリアンがゲスのことを「労働させるための機械」としてではなく、「同盟」や「友人」といった対等な関係で扱おうとし始めることで、ゲスも協力的になったし、
シェパードたちとの関わりで、「個」としての自覚を持ちはじめたリージョンという存在もいるし。
「この親にしてこの子あり」っていう感じで、リヴァイアサンによって生み出されたカタリストは、「支配」とか「命の刈り取り」とか、そういうやり方で問題を解決することをまったく悪いと思わないAIになってしまった…とか思うんだけど考えすぎだろうか?
とにかくそんなやつに銀河の行く末をゆだねるのは、ダメな気がするのですよ。というか癪に触るんだよおぉ!
まずはカタリストとリーパーを破壊して、この「サイクル」を終わらせること。
そのあと、有機生命体と機械生命体の戦いはまた繰り替えされるかもしれないし、繰り返されないかもしれない。でもそれを決めるのはカタリストじゃないです。残された生命たちが決めることです。
その上で、「有機生命体と機械生命体の融合が望ましい」という結論が出たのなら、またクルーシブルを建設すればいい。
また、EDIとジョーカー、ゲスとクォリアンのように、「わざわざDNAを改変しなくても、機械生命体と有機生命体はうまく共存できる」という結論が出たのなら、そうすればいい。
どんな選択であれ、それは現在の生命が自らの意志で選ぶ道です。
そしてそれらは必ず成し遂げることができるはず。
なぜならば、赤エンドでハケット提督が語っているように、生命は種を超えて団結し、協力して、どんな大きなことでも成し遂げられるから。
ただでさえ緑エンドは「なんでシェパードの命を捧げたらみんなのDNAを書き換えられるの?」っていう、突飛で謎な超自然的展開だし、
赤ルートの方が最も現実的で、地に足のついたエンディングのように思えます。そして、生命の「可能性」を信じる希望のこもったエンディングにも思えます。
さいごに
ここまで書いてきてあれだけど、もしも緑ルートでシェパード生存の未来があるとしたら、さっきまで書いてきたこと全部棚に上げて、迷わず緑ルートを選んでいたかも。
とにかくシェパード生存の未来が捨てられなくて、赤ルートを必死に肯定したかっただけなのかもしれない。
それくらい、私はシェパードが好きなんだなあと思います。シェパードが生き残って、ノルマンディーのみんなと再会するシーンが見たかった…。
「主人公を犠牲にして世界を救う結末」を美談として礼讃するのは好きじゃない。泥臭くても生きる姿を讃える物語の方が私は好きです。
なんだかすごく熱く語ってしまったけど、まあ選ぶ選択肢は人それぞれ。
ここに記したのはあくまでも私の個人的感想でございます。
プレイヤーによって、パラゴン、レネゲイド、いろんなシェパードがいるからね!それがこのゲームの魅力です。
なんにせよ、本当に夢中になれるゲームだったし、終わってしまうのが本当に寂しくなるゲームだった。
いつかまた1からプレイし直して、あの世界に戻りたい。
いろいろモヤモヤはしたけど、大好きなゲームになりました。
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赤エンド
かつてリーパーという強大な敵が、全ての生命を滅ぼそうとした。
そこで、多くの種族が団結し、可能な限りの全戦力を集めてリーパーに立ち向かった。
そして、あらゆる種族の技術力、知識を結集させて「クルーシブル」という兵器を作った。
クルーシブルの発動が決定打となり、私たちはリーパーを滅ぼすことに成功した。そのことから、私たちは種族の違いを超えて、協力し合い、団結できることが証明された。