アガサ・クリスティーとか、コナン・ドイルとか、海外の有名なミステリー小説、「読んだよ」って人に言えたらなんかかっこいいですよね。でもこんな悩みはないですか?
カタカナの馴染みの無い名前の人がたくさん登場するせいで、ちょっと読み進めると、この人誰だっけ?ってなって数ページ戻る、を繰り返しながら読まなきゃいけないことが多いのです。
人物名だけではありません。場所の名前とか、とにかくカタカナの名前が覚えられない。人の名前だと思ったら場所の名前だった!とかいうときもよくあります。もうとにかく似たような名前が多すぎる。
ということで、今回はアガサ・クリスティーの代表作の1つ、『アクロイド殺し』について、人物紹介や相関図などを掲載しながら、楽しく読むための助けになる内容を書いていきたいと思います。
イラストによる図解で、できるだけ見やすくわかりやすく書いてます!
あくまでも読む人が読みやすくする為の内容なので、謎解きのネタバレはしません。
ご安心ください。
目次
主な登場人物と相関関係図(イラスト付き)
主な登場人物の概要と相関関係図です。これをちょいちょい見ながら小説を読み進めていくのがおすすめです。
主な登場人物
登場人物の名前は、創元推理文庫『アクロイド殺害事件』(大久保康雄/訳)の表記を元にしています。出版社や訳者によっては、表記が異なる場合があります。
※イラストは私が勝手な想像をもとに描いたものです。全員猫ですがご了承ください(本当は人間です)!
アクロイド家の当主。地主。お金持ちだけどケチ。自宅の書斎にて殺害される。
ロジャーの弟セシルの妻。未亡人。ロジャーの家に居候している。「鎖と歯と骨の化身みたいな」ツンツンした感じの女。
セシルの娘。肌が白く、美しい。ラルフ・ペイトンと婚約関係にある。
ロジャーの元妻の連れ子。皆から好感を持たれる美貌の持ち主。
アクロイド家の執事。「あぶらぎった、肥った、とりすました顔をした」男。黙々と仕事をこなす。
ロジャー・アクロイドの秘書。快活な青年。陽気で明るくていいやつ。
ロジャーの古い友人。狩猟家。猛獣狩りの名人。
アクロイド家の小間使い。仕事上の過失を理由に、使用人を辞める予定だった。
物語の語り手。この事件の一部始終を手記として記録する。お医者さん。
エルキュール・ポワロ
ベルギー人の名探偵。探偵業を引退して、シェパード医師の隣家に引っ越してきて隠遁生活を送ろうとしていた。口ひげが特徴的な変人。
相関関係図
人物名とイメージをつかんだら、それぞれの関係性について理解しましょう。
読んでいて忘れてしまった時にちょくちょく見返すのに活用してください。
ストーリーあらすじ
9月16日から17日にかけての夜、フェラーズ夫人が亡くなった。自殺か他殺かはわからないまま、翌日に今度はロジャー・アクロイドが何者かによって殺害される。
偶然、村へ引っ越してきたばかりのエルキュール・ポワロが捜査をすることになり、物語の語り手であるシェパード医師が、その調査を手記として記録する。
数多く登場する人物たちのアリバイを1つ1つ確認し、証言の真偽を見抜いていくという、昔ながらのストーリー展開でありながら、出版当時は斬新すぎると言われたトリックで、最後は大どんでん返しの結末に終わる。
場所の名前と事件現場の見取り図
カタカナで覚えづらいのは人名だけではありません。
地名や建物の名前もカタカナだらけです。主要な建物名の説明と、事件現場となるファーンリーパークの間取りを図解で載せておきます。
キングス・アボット村にある建物の名前
キングス・パドック荘
フェラーズ夫人が住んでいた家。
ファーンリーパーク(ファーンリー荘)
アクロイド家の人々と使用人たちが住む家。
スリー・ボアーズ館
田舎宿。しばらく村を離れていたラルフ・ペイトンがキングス・アボット村に戻ってきた際に宿泊していた。
からまつ荘
ジェイムズシェパード医師の隣の家。ポワロが住み着いた。
ファーンリーパークの間取り
事件が起きたファーンリーパークの見取り図です。
小説内の挿絵と文章による描写を参考にして作成しました。
撞球室
撞球室は「どうきゅうしつ」と読みます。
撞球とは、ビリヤードのこと。つまり撞球室とは、主にビリヤードを楽しむ部屋のことです。
フランス窓
テラスに出入りできるフランス窓。
普通の一般的な窓と違って、天井から床まである大きな両開きの窓、というか扉です。
あとはストーリーを楽しむだけだ!
登場人物とその関係、そして場所のイメージをつかんだら、あとはストーリーをどんどん読んでいくだけです。
この記事はあくまでも、理解して楽しみながら小説を読めるように手助けをする為のものなので、ストーリーのネタバレはしません。存分にお楽しみください。
『アクロイド殺し』について
「推理小説の基本ルール」についての議論を呼んだ名作
すべて読み切った時、多くの人がこの小説のトリックの巧みさにハッとさせられると思います。
東京創元社の文庫版では、作者によるまえがきや巻末の解説の部分に、このトリックには賛否両論があったことが書かれています。
否定派の主張は、簡単に言うと「フェアじゃない」ということ。
ミステリー、推理小説とは、「難解な事件について語る作者」と、「それをがんばって推理しようとする読者」の勝負!みたいなところがあります。
与えられる手がかりを元に推理しながら読むところに面白さがあるわけです。だから、作者(≒語り手)は、推理に必要な情報を過不足なくきちんと読者に提供しなければなりません。「語り手だけが知っている情報」があってはならないのです。
最後の最後で急に初登場の人物が現れて、その人が犯人でした、というオチは明らかにフェアではありません。
読み手からすれば、そんな人物の登場なんて予測できないわけで、推理のしようがないからです。それでは小説としてつまらない。
フェアで面白い推理小説を書くために、「推理小説を書くときに守るべき基本的なルール」を作った人もいます。「ノックスの十戒」や「ヴァン・ダインの二十則」といったものが有名で、絶対に守るべきものではないですが、一般的とされています。
クリスティーの『アクロイド殺し』は、こういった一般的なルールからちょっと外れている為に、「フェア・アンフェア論争」が巻き起こってしまったということなのでしょう。
それだけ当時の人々にとっては斬新で驚くべき手法のトリックだったということでもありますね。
本記事では「フェア・アンフェア論争」の詳細等について深く論じるつもりはありません。
ただ、この小説を読むことで、「推理小説ってこんなルールがあるんだ」という暗黙のルールみたいなものに興味を持つきっかけになることは確かです。
クリスティー作品に興味を持ったら、まずはこれ!
本作品以外にも、もっとクリスティーの作品を読んでみたい!という方には必読の、ガイドブック的な本があります。その名も『アガサ・クリスティー完全攻略〔決定版〕』。
ミステリ評論家の霜月蒼さんが、クリスティーの100作品を1つ1つ丁寧に愛情込めて紹介してくれている本なのですが、ネタバレもなく、そして何よりクリスティー初心者にやさしい!
おすすめレベルを5段階の星評価で記してくれているのですが、その表現もユニークです。
星5★★★★★の作品は、「未読は許さん。走って買ってこい。」
星3★★★は、「読んで損なし」
星1★は、「アガサを愛する貴方向け」
初心者はどれから読むと良いのかが一目瞭然ですし、読んだ後の解説としても、ふむふむと勉強になる部分が多く、ながーく楽しむことができます。
私も未読のクリスティー作品はたくさんあるのですが、この本のおかげで「もっと読んでみよう!」という気持ちでわくわくしています。
もちろん「アクロイド殺し」についても記載されており、「フェア・アンフェア論争」についてのコメントも必見です。
ミステリの女王アガサ・クリスティーの作品を、思う存分楽しんでください。
海外の小説はとにかく人物名が覚えられない!