『賢さをつくる』書評|頭が良くなりたいと思ったらまず読む本

賢さをつくる

「頭をよくする」たぐいの本は世の中に山ほどありますが、その中でまず最初に読んでおくといいのがこの本『賢さをつくる 頭は良くなる。よくなりたければ。』です。

非常にシンプルでわかりやすい、「考え方の基本」を教えてくれる本です。

多くの人が「頭が良くなりたい」と思っているけれど、そもそも「頭が良い」ってどういうことなのか、きちんと具体的に説明できる人ってどれくらいいるでしょうか?

私はこの本を読んで初めて、「頭が良い」とはどういう状態なのか、すっきりと納得のいく答えを得ることができました。この本を読むことで、自分がどういう状態になれば賢くなれるのか、「理想の思考の状態」が見えてきます。

脳内をすっきりリセットして、シンプルな思考から始められるので、「頭良くなりたい!」っていう人はとりあえずこの本から読み始めて、「頭が良くなるための考え方の基本」を身につけてみてはいかがでしょうか。

  

  

頭が良いとはどういう状態なのか

頭が良い状態とはどういうことか?
著者の答えは単純明快で、頭の良さを下記のように定義しています。

思考とは、具体化と抽象化の往復運動である。
頭がよい人とは、具体化と抽象化の往復運動が得意な人のことである。

第1章 「頭がよい」とは、どういうことか? より

「頭が良い」アイデアマンの思考回路

例えば、「発想が豊かで、良いアイデアをよく思いつく人」は「頭が良い」と呼ばれる類の1人です。

アイデアマンと呼ばれる人たちは、なんとなくノリで思いついたアイデアを無造作に出しているわけではありません。彼らは頭の中で、抽象化と具体化を活用した思考プロセスを踏み、その上で良いアイデアを生んでいます。

本書では例として、タピオカミルクティーでひと儲けしたスイーツ店が、新しいヒット商品を生み出す場合の思考プロセスが紹介されています。

  1. タピオカブームはいずれ過ぎ去る。生き残るためには、新しいヒット商品を生み出さなければ。
  2. 同じスイーツ店の部類としてスターバックスに目を向けると、どうやら「抹茶クリームフラペチーノ」が定番の人気商品らしい。(具体的な類似商品に目を向ける)
  3. タピオカミルクティーの味は、基本は黒糖とお茶でできている。(抽象化)
  4. タピオカミルクティーと抹茶クリームフラペチーノの共通点を探ると、「実は、日本の若い女性は新しい和菓子風のスイーツが好き」というヒットの本質が見えてくる。(さらに抽象化)
  5. 「新しいタイプの和菓子風スイーツ」なら、例えば「きなこパンケーキ」や「黒蜜ドーナツ」なんかはどうだろう。(再び具体化)

これが抽象化と具体化のプロセスです。いったん抽象化してヒットの本質を探り、そこからもう一度具体化して新しいアイデアにするわけです。

この思考の往復を上手に何度もこなせる人の頭には、次々と新しいアイデアが生まれていきます。

「頭の良い」会社員の思考プロセス

本書では「優秀な会社員」を例にとった説明もしています。上司からこんな指示を受けた場合です。

「お客さんにダイレクトメールを送るから、印刷業者から見積もりをとって!」

指示を受けて仕事に取り掛かるとき、普通なら「発送はいつなのか?」「どの地域に送るのか?」「どんな紙で、何部印刷するのか?」といった情報を集めて、問題を具体化していきますよね。

頭の良い人は、さらに「なぜ」ダイレクトメールを送るのだろう?とも考えることができます。

その問いについて考えるには、会社全体のビジネスモデルや、方針・戦略について知識を吸収し、理解する必要があります。

より広い視点で問題を抽象化することで、会社や上司の意図を汲むことができます。その後、上司に新しいアイデアを提案できるかもしれません。

具体化と抽象化

具体化と抽象化、両方向に考えを巡らせることができる人こそ優秀な「頭の良い」人なのです。

頭を良くするにはどんな能力を伸ばせばいいか

「頭の良さ」は3種類の定義で説明できる

周りの人に「頭が良いってどういうことですか?」と質問すると、「知識が豊富」とか「理解するスピードが速い」とか、10人に聞けば10通りの答えが返ってきます。人によって、その認識は様々です。

本書を読むと、世の中の人がそれぞれに説明する「頭が良いとはこういうこと」は、全て3種類のどれかで言い換え可能であることがわかります。

  • 「具体」と「抽象」の距離が長い
  • 「具体化」と「抽象化」のスピードが速い
  • 「具体化」と「抽象化」の回数が多い

例えば、頭の回転が速いなって思う人は「スピードが速い」人ですね。知識が豊富だなと思える人は「距離が長い人」でしょう。多種多様なアイデアをたくさん思いつく人は「距離が長く」かつ「回数が多い人」ではないでしょうか。

自分の特性と仕事によって、伸ばすべき能力を選ぶ

前述の3種類のうち、自分の仕事内容や役職によって、伸ばすべき能力を優先して鍛えていくと効率的です。

例えば営業マンやトークを中心とする仕事なら、素早い思考が必要になるので「スピード」重視かなあ、とか。

人によって得意不得意があるので、自分が向いている仕事の内容も見えてきます。

私はアドリブでどんどんしゃべるのは苦手で、じっくり考えてから喋るタイプなので「スピード」はダメです。その代わり「距離」と「回数」でまわせる仕事なら頑張れます。

さらに、現場に近いところで働く平社員と、役職付きの管理職では求められる能力も違ってきます。そういった会社の組織それぞれに求められる能力についても、本書では細かく解説してくれていて参考になります。

  

頭をよくする思考方法を身につける

本書の最終パートでは、実際に「具体化と抽象化の往復運動」が得意になるためのいくつかの練習方法を紹介してくれています。

例えば

抽象化するために「なぜ?」「そもそも」を自分に問いかける。
具体化するために5W1Hで自分に問いかける など。

難しい思考法は必要ないので、誰でもいつからでも始めることができます。

私は、「MindNode」などのマインドマップアプリを使ってアイデアを練ることがちょこちょこあるのですが、この本を読んで「具体」と「抽象」の軸でマインドマップを活用してみるのもありだな、と思いました。

マインドマップ
右側を抽象的な内容にして、左にいくほど具体的なことを書いていく。

さいごに

もしも「なんたらかんたら思考法」みたいな内容の本や、「ハーバード式〇〇術」みたいな本を読もうと考えているのであれば、この本を読んだあとに読むことをおすすめします。

繰り返しになりますが本書は、頭の良い状態になるための基本中の基本となる考え方を説明してくれる本です。

すべては抽象化と具体化の往復なのだという基本の考え方を知っておけば、その後にどんな応用本を読んでも、難しくて混乱した時、すぐに基本に立ち返ることができます。

実際にこの本を読んでから、日常でちょっとした考え事をしている時でも「あっ、今考えているのは抽象的なレベルの話だな」とか、「ここから具体化していけばいいのか」など、抽象と具体を意識して考えている自分がいることに気づきました。

心なしか頭の中が以前より整理されている感じがしているので、こうやって少しずつ「頭の良い人」を目指していきたいと思っています。読んでよかったです。

「頭が良くなりたい!」と思ってる人はぜひチェックしてみてください。