またいい本に出会ってしまった。
猫が好きで尚且つ本が好きならば、この本を読まない理由はないんじゃないでしょうか。
本書の前書きによると、2016年にアメリカで行われたフェイスブックの調査で、「猫好きの人には本が好きな人が多い」という調査結果が出たそうです。
そして作家という職業の人の中にも、猫好きは数多く存在します。
ずっと机に向かって仕事をしたり読書することが多い人間にとって、猫はずっとそばにいてくれる心強い相棒となるのでしょう。
海外作家の作品で何かいいものをと探している方は、この本を読んで「猫好き作家」というフィルターで、お気に入りの作家を見つけてみるのはいかがでしょうか。
また写真集として眺めるだけでも癒されるので、本棚に1冊置いて、気が向いた時に開いて楽しむのにも最適な本です。
表紙の写真は、『ティファニーで朝食を』で有名なトルーマン・カポーティ。こんな感じの微笑ましい写真を、ページをめくるたびに楽しむことができます。
目次
お気に入りの作家探しのお供に
海外作家の作品にチャレンジしてみたいけど、何がいいかな?と思ってる人にはおすすめの1冊です。それぞれの作家の猫にまつわるちょっとしたエピソードや裏話が盛り込まれていて、だんだん作家に対して親近感が湧いてきます。
作家たちが愛猫につける名前を知るだけでも楽しいです。
マーク・トウェインの「ソクラテス」とか、村上春樹の「みゅーず」、レイモンド・チャンドラーの「タキ」(日本語の「竹」が由来)、カジム・アリの「ミネルバ・マクゴナガル」など、個性が出てますね。
世界中の作家が紹介されているのですが、「へえーこの人も猫好きだったんだ!」と驚く部分があったり、「全然知らない人だけど、なんかいい人そう!」と思ったりして、世界が広がる感じがします。
というか、猫好きっていうだけで何故かみんな良い人に見えてくるから不思議です。我ながら、猫好きってちょろいんだな。
私もこの本を読んで、新たに読みたい小説が見つかりました。
チャールズ・ブコウスキーの『勝手にいきろ!』っていう小説。全然知らない作家さんだったけど、ハードボイルドでタフなかっちょいい物語らしくて、読むのが楽しみです。で、そんなかっこいいおっさんが猫をめちゃくちゃ可愛がっているというギャップにもやられました。
そんな感じで、読む人それぞれにお気に入りの猫好き作家が見つかるのではないかと思います。
文学部の大学生は、これを機に猫好き作家を卒論のテーマに掲げてみたらいいんじゃないでしょうか。というか私もそうすればよかった。
「村上春樹作品における猫の役割」とか。「ヘミングウェイが描く猫」とか。猫をテーマにした文学部生の論文、読みたいなあ。ぜひ挑戦してみてください。
眺めるだけで癒されるねこ写真集として
特に文章を読まなくても、眺めるだけで楽しめる内容になっています。
私は猫を愛でる作家たちの写真がほほえましくて、「ふふふ、かわいいね」とニコニコしながらページをめくって楽しめました。
作家というと、しかめ面で難しいことを考えている偏屈な人が多そうですが、猫と写っている写真の中ではみんな笑顔。猫も人も幸せそうです。
髭面で白髪の渋い巨匠作家が、キュートなまんまるな目のかわいらしい猫を抱き抱えてほほえんでいる様子は、たまらなく愛おしくてほっこりします。
おしゃれな女性作家と気まぐれなシャム猫の組み合わせは、まさにピッタリすぎて「うんうん」と納得。
なんとなーく、飼い主と猫の顔が似ているような気がするのは偶然かなー。そういう部分にも着目しながら眺めてると、あっという間に時間が経っています。幸せ。
猫と、文学と、好きなもので満たされる幸せいっぱいの時間を過ごすことができる本です。
Amazonで、何ページか中身の画像が掲載されていますので、どんな雰囲気か気になる方は見てみてください。
『文豪の猫』アリソン・ナスタシ著 浦谷計子訳