2015年にデビューしてから、ハヤカワSF大賞、日本SF大賞、山本周五郎賞と様々な賞を受賞し、世間の注目を集めまくっている小川哲さん。
現在までに出版されている3作品すべて読みましたが、もう圧倒されました。
私みたいな凡人が読むと、もう言葉が出てこないんですよね。
「めちゃくちゃ頭いい人だわー」って、そんな感じのことしか言えない。
「とにかくすごいんだよ!」としか言えない。すごいっす。
それでも頑張って言葉にして、小川哲さんの作品のおもしろさをまとめるとこんな感じです。
- 思いつくアイデアのレベルが高すぎる
- 架空の世界を、見てきたかのように語る
- めちゃくちゃ勉強になる
ふつーに働いて、ふつうーに生活して、休日はゲームするか映画観て、なんとなーく生きてたら、絶対に知ることのできない世界を、小川さんの作品は見せてくれます。
ボーッと暮らしてる凡人の頭脳レベルではたどり着けないような考え方やアイデアに触れさせてくれて、「そんな視点があるんだ!」っていう気づきを与えてくれます。
読んでるか読んでないかで、世界を見る目が変わります。
そんな小川哲さんの小説3作を紹介します。
目次
作品紹介
ユートロニカのこちら側
2015年10月出版。2017年12月文庫化。
第3回ハヤカワSFコンテストで大賞を受賞。
目には生体コンタクトカメラ、体には立体集音マイク。
日常生活のほぼすべてを記録され、あらゆる個人情報を提供する代わりに、「働かなくても良い、犯罪にあうこともない、好きなことだけして暮らせる楽園のような場所」に住むことができるという未来SF小説です。
「監視社会」ってディストピアの悪いイメージが強いけど、突き詰めて考えれば実はものすごい理想郷なんじゃね?って思わされる、目からウロコの世界観に脳みそを揺さぶられます。
アイデアも面白いし、「現実でも起こり得るな」って感じさせるリアリティがあるし、「そもそも理想的な社会ってなんだろう?」って考えさせられる、読んで損のない小説です。
デビュー作でいきなり賞を受賞しちゃうってすごいですよね。
私の感想記事はこちら
ゲームの王国
2017年8月出版。2019年12月文庫化。
第38回日本SF大賞受賞、第31回山本周五郎賞受賞。
伊坂幸太郎さんや宮部みゆきさんが絶賛してる超大作です。
ポル=ポト政権下のカンボジアを舞台に生き残りゲームが繰り広げられる物語で、前半は史実をベースにした歴史小説ファンタジー、後半はSF要素を加えて未来の社会を描いた小説となっています。
私は単純に「ゲームが好きだから読んでみようかなー」っていう軽い気持ちで読み始めたのですが、想像以上の大巨編に圧倒されまくって軽く人格が変わりました。
前半の歴史小説部分は、ベースは重い話なんですが、超能力が使える面白キャラクターのおかげで読みやすく、グイグイ引き込まれながら一気に読んでしまいました。
後半のSFパートは、『ユートロニカのこちら側』を書いた小川さんならではの斬新なアイデアを今作でも出してきたなー!という感じです。
個人的にはすごく勉強になった小説で、資本主義や社会主義など、学生時代に学んで以来、ほぼ考えてこなかった「社会のあり方」について、改めて学びなおす良い機会になりました。
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嘘と正典
2019年9月出版。
第162回直木賞候補作。
小川哲さんの発想力を存分に活かしてアイデアを散りばめた、全6篇の短編集です。
タイムトラベルをトリックに使ったマジシャンの話はアイデアも語りも演出も効果的で面白かった。
「脳をいじって記憶を消せば世界って簡単に変えられるよね」っていう、小川さん得意のアイデアは本作も健在で、新しい物語として新たなかたちで提示されています。
また、音楽を数学的に解釈するっていうアイデアも文系の私には新鮮でした。さすが、理系一類で東京大学に入学した小川さんならではという感じです。発想自体は理系の人ならわりと思いつきそうなものですが、しっかり1つの物語として語れるところがすばらしいと思います。
1篇はKindle電子書籍版で無料で読めるので、お試しで先に読んでみるのもおすすめです。
まとめ:どんな人におすすめか
がっつり未来のSFが読みたいという人は『ユートロニカのこちら側』がおすすめです。短編仕立てになっているので一番読みやすく、スルスルと詰まることなく読めてしまうと思います。
ボリュームたっぷりの長編で、世界観にどっぷりハマりたい人は『ゲームの王国』が良いと思います。個人的には一番好きな作品です。『ユートロニカ〜』よりもキャラクターの濃さやドラマ性が濃密になっていて、今後の長編作にも期待が高まります。
『嘘と正典』は、前の2作品を読んだ後に、小川哲さんの世界観にもっと触れたい!と思った方におすすめです。
小川哲さんの小説は、どの作品からもいろいろな知識を吸収できるし、まったく知らなかった世界観を見せてくれるので、読むとなんだか得した気分になります。
新しい作品が出る度に次回作への期待が高まる作家さんですね。
次回作が出るまでに、以上3作をぜひ読んでみてください。