映画『ドニー・ダーコ』難解ストーリー考察と裏設定|この「わからなさ」が面白い

donnie darko

めちゃくちゃ難解で「意味わからん!」と言われながらも、カルト的なファンを持ち続けている映画『ドニー・ダーコ』

自分なりに考察したり、裏設定についてリサーチした内容を踏まえて、超私的な解釈として私なりに思うところをまとめました。

以下、長々と書いてますが、結論から言うと「難しいけどこの映画大好き!」ってことです。それだけ伝われば良いと思ってます。

  

  

映画紹介

あらすじ

ドニー・ダーコ(ジェイク・ギレンホール)は、17歳の少年。ある夜、奇妙な声に誘われて自宅の外に出てみると、ウサギの着ぐるみを着た男が現れ、ドニーに語りかけてきます。

28日と6時間と42分12秒、それが世界の終末までの残り時間だ

翌朝、ドニーはゴルフ場で目覚めます。
自宅に戻ると、なんとドニーの部屋に飛行機のエンジンが墜落していました。ウサギに誘い出されなければ、ドニーは部屋で死んでいた。ウサギは命の恩人なのだろうか?

その後も、ちょいちょい現れてドニーの行動を導こうとしてくるウサギ。
「ウサギ」とは言っても、かわいいウサちゃんじゃないです。なにしろ見た目がめちゃくちゃ怖い。声もなんか機械的で怖い。イヤホンで聴いてたら怖すぎてビビり倒しました。

ウサギのフランク
28日と6時間と42分12秒、それが世界の終末までの残り時間だ

精神病を患っているせいでもともと精神が不安定なドニーは、ウサギの影響でますますおかしな行動を取ったり幻覚を見たりするようになっていきます。(ジェイク・ギレンホールの「病んでる」演技がものすごくリアル。)

ドニー(ジェイク・ギレンホール)
急に笑い出すのが怖いドニー

突如転校してきた美しい女の子グレッチェン、「タイムトラベルの哲学」という意味深な本、胡散臭い「恐怖克服セラピー」とかいう自己啓発ビデオとその講師。

映画全体を通して、意味深だけど意味がわからない行動・発言が次々と飛び出し、謎が謎を呼んでいきます。

28日後に世界は本当に終わるのか?
謎のウサギの正体は一体誰なのか?

散りばめられるいろいろな要素をヒントに、ドニーと一緒に謎を解明していくサスペンス映画となっています。

意味がわかりそうでわからない難解映画

とにかくストーリーが難解で、すぐに全てを理解するのは難しい。
何しろヒントになりそうな要素が多すぎて、情報処理が追いつかない。考えれば考えるほどわけがわからなっていく。

でもなんだかわかりそうな気もしている。そして衝撃のエンディングに、また唸る。考える。そしてやっぱりわからない。

わからん

観てる最中
「なんで?」「どうして?」「これはどういうこと?」
「ははーん。こう繋がるのか。つまり……なるほど……。」

「……わからん。」

観終わった直後
「あーなるほどね。この人がね、こういうことで…つまり………ふむふむ………」

「…わからん。」

この「わからなさ」が面白い

わからないからこそ面白い。この映画の一番の醍醐味は「わからないこと」です。
「これはどういう意味?」「この人はなんでこんなセリフを言うんだろう?」と、頭を悩ませて、自分なりの解釈を考えるのが楽しい。

考察するのが好き!という人にはぜひおすすめしたい映画です。

さらに言うと、一通り自分でとことん考えた後で、他の人のレビューを読むのがめちゃくちゃ面白い。いろんな解釈の仕方があって、「やっぱり!」っていうのもあれば「そんなん思いつかなかったー!」っていうのもあって、読みながらまた理解を深められるのが楽しい。脳みそがフルで活動している感じが最高に気持ちいいのです。

もちろん、どの映画もだいたい観終えた後のレビュー漁りは面白いんだけど、この映画は特にその傾向が強いと思います。

しかし、なぜここまで「わからないこと」が面白いのか?なぜそう思えるのか?

実はこの映画、「わかってしまう」こともできるのです。

この映画には詳細に作り込まれた公式の裏設定が存在していて、映画では知ることのできない真実を知ることができるのです。

ただしこれを知ってしまうと、もう後には戻れません。裏設定を知るなら、「わからない」状態を存分に楽しんでから。最後までとっておくことをオススメします。

※ここから先ネタバレ。先に読むと後悔するので映画を観てから読むこと!

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「わかってしまった」ら、面白さが半減してしまう映画?

いろいろ考えさせられた後で出てくる裏設定

いろんな人のレビューを漁っているとチラチラ見かける情報。

実はこの映画、作中でドニーが読んでいた本「タイムトラベルの哲学」の内容が公式で発表されており、その内容の説明が挿入されたディレクターズ・カット版も存在しているそう。

本編では知ることのできなかった裏設定を知ることで、ようやく全貌が明らかになるというもので、そのこと自体にも賛否両論があるようです。

これについては、細かくわかりやすく説明しているサイトがいくつもあるので、そちらも参考にしていただきたいのですが、ここではいろんな情報をひっくるめて自分なりに簡単にまとめたものを紹介します。

ちなみに私が主に参考にしたのはこちらのサイトです(英語サイトです)
http://www.donniedarko.org.uk/explanation/

  • ドニーの生きる世界は、何かのきっかけで正規の世界「主宇宙」に歪みが生じたせいで生まれてしまった非正規の世界「接宇宙」である。
    • この接宇宙は不安定で崩れやすく、主宇宙もろとも崩壊させてしまう危険を孕んでいる(その崩壊が28日と6時間と42分12秒後)。
  • 歪みの副産物として、接宇宙にはアーティファクトと呼ばれる金属製の物体が生まれるのだが、このアーティファクトを主宇宙に戻すことで、世界は救われる。
    • 映画では、墜落した飛行機のエンジンがアーティファクトにあたる。
  • 未来の人々は、世界の崩壊を防ぐためにドニーを操り、アーティファクトを主宇宙に戻させようとする。
    • ウサギのフランクはドニーの行動を導くための存在であり、たびたびドニーの前に出現させて行動を促す。

ドニーが学校を水浸しにしたり、「恐怖克服セラピー」の自己啓発活動家の家に放火したりしたのは全て、「ドニーに彼女ができて、最終的に彼女が死ぬ」という結末や、「ドニーの母と妹が乗った飛行機が墜落する」という結末を作り出すための布石として行動させたものです。

全ての結末を知ったドニーは、恋人と家族を救うため、超常的な力を使って飛行機のエンジンを主宇宙へと戻すことで時間をリセットします。エンジン墜落の日に時間は戻り、ドニーは自室で笑いながら全てを受け入れ、墜落の衝撃で死亡します。

この一連の過程は全て、世界の歪みをなおす為に未来の人たちが仕組んだシナリオであり、ドニーは操られるままに行動し、結局は死ぬ運命にあったのでした、というオチ。

全てが正しいのかはわかりませんが、だいたいの設定はこんな感じだそうです。

  

  

全てをわかってしまった後に感じる切なさ

ドニーの人生に価値はあったのか?

ここまで公式に設定を説明される映画は初めて観たけれど、同時に、「設定を知らない方が楽しめたかな」とここまで思えた映画も初めてでした。

「これはどういうことなんだ」と頭を悩ませていたあの時が懐かしい。先がわからない不安感とか恐怖感とか、謎を解明したいと思うあのワクワク感はなんだったんだ、あの感動を返してくれ、という感じでもやもやします。

だからこそ、
全てを知ってしまったからこそこう言える。「わからないこと」は面白い。だからこの映画は、考察を楽しむ映画です。考察好きにオススメの映画。

でも、全部知った上で、私はこうも思いたいのです。

これはあくまでも「ドニーの物語」。

ドニーと、ドニーを取り巻く世界の人々の物語。仕組まれたシナリオだろうがなんだろうが、ドニーはドニーの人生を生きたじゃないか、と思います。

作中でドニーは、将来画家か小説家(もしくは両方)になりたいという夢を語っています。「僕を知ってほしくて」と。

なんとなく感情が読み取りづらいけど、グレッチェンと付き合うことになった直後のドニーは、実はすごくウキウキしています。精神科医の催眠療法中も、ずっと女の子のことを考えてるのがバレバレ。

悪ガキ友達とタバコ吸ったり、酒飲んだり、悪いことするのも、くだらない授業やセミナーに物申すのも、グレッチェンと楽しい時間を過ごすのも、全てドニーの大切な人生の一コマです。

人間の感情を「恐怖」と「愛」という2つの要素でしか考えられない先生に対して、「人間はもっと複雑で、2つになんか分けられない」と主張するドニー。

「0点にするわよ」と先生に脅されても、「ケツにカードを突っ込め」と下品な暴言を吐くドニー(笑)。笑っちゃったけど、かっこよかった。

そして、映画のエンディングで流れる曲「Mad World」が、なんとも心に染みて切ない。

ドニーの葛藤も、グレッチェンとの思い出も、113分の映画の中では確かに存在していたのに、皆から忘れられ、なかったことになってしまうのがどうしようもなく切なくて胸が苦しくなります。

この世界はどこか狂っていておかしい。

児童ポルノ犯罪グループのメンバーという裏の顔を持つ男が、世間では人気自己啓発活動家としてチヤホヤされる世界。まともな教師がクビになり、エセセラピストの崇拝者が我が物顔で授業をする学校。

ドニーは世界を救うためのコマに過ぎない存在かもしれないけれど、ちゃんと感情を持っていて、孤独を恐れる弱さがあって、おかしな世界をおかしいと主張できる強さを持っていました。

恋人と家族を救うために自分が死ぬことを受け入れるのも、ドニー自身が決めた選択。そうせざるを得ないよう、シナリオに促されてはいたものの、選択・決断したのはドニー自身だと思いたい。

物理学の教師、モニトフ先生も言っていました。

運命が映像として目に見えるということは、運命に背く選択もあり得るということだ

ドニーはあえて運命に背かない選択をとったのだと思いたい。ドニーはドニーの人生を精一杯生きた。だからこの映画はあくまでもドニーの物語。この世界を操る謎の存在のための物語ではありません。

いろいろな観点で楽しめる映画

私たちが生きる現実世界も、もしかしたら誰かが作ったシナリオなのかもしれない、なんて考えてしまいます。そもそも私たちが生まれてきたのは親の意思によるものだし、生まれてくる場所も、環境も、容姿も選べません。

自分以外の誰かが作った世界で生きる人生だったとして、そこに価値はあるのか?って考え出したら、なんだかやりきれない気持ちになるけれど、そんなことは考えてもしょうがない。

生きること自体に価値がある。

いろいろ考えさせられた後に、すとーんとシンプルな結論に至りましたな。

考察しながら世界全体の謎を解く楽しさがあって、その謎の答えを知った上で再度考察する楽しさもあって、「ドニーの物語」として人間の内面的な部分について考えることのできる面白さもある。

この先何回も見たくなる、不思議な魅力を持つ映画だと思います。

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